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子どもの体力は本当に落ちている?|平成20年からのデータで検証

2026年7月更新

「今の子どもは体力がない」という声をよく聞きます。確かに運動不足や外遊びの減少など、子どもを取り巻く環境は変わりました。ですが、スポーツ庁の公式データを見ると、状況はもっと複雑です。平成20年(2008年)から令和7年(2026年)までの18年間、すべての種目が同じように低下したわけではないのです。

この記事では、実際のデータから「何が落ちたのか」「何が伸びたのか」を数値で確認します。

データについて

  • 対象:小学校5年生
  • 期間:平成20年度から令和7年度(令和2年度は調査中止のため除く)
  • 体力合計点:各種目を10点満点に換算し、合計80点満点

体力合計点の推移:男子

男子の体力合計点を見ると、平成30年度の54.21点がピークです。その後低下し、令和4年度に52.29点で最低を記録。令和7年度は53.03点まで回復しましたが、ピークには及びません。

年度体力合計点前年比
平成20年度54.19-
平成30年度54.21(ピーク)+0.02
令和元年度53.61-0.60
令和3年度52.53-1.08
令和4年度52.29(最低)-0.24
令和5年度52.60+0.31
令和6年度52.54-0.06
令和7年度53.03+0.49

男子の傾向(平成20年度と令和7年度の比較)

  • 全体:54.19 → 53.03(-1.16点、下降)
  • ピークからの落差:平成30年度54.21が最高。コロナ禍で大きく低下し、回復途上
  • 直近:令和4年度を底に、回復傾向が続く

体力合計点の推移:女子

女子の場合、平成30年度の55.90点がピークです。その後減少傾向が続き、令和6年度に53.93点で最低に。令和7年度はわずかに上向きで53.98点です。

年度体力合計点前年比
平成20年度54.85-
平成30年度55.90(ピーク)+1.05
令和元年度55.59-0.31
令和3年度54.66-0.93
令和4年度54.32-0.34
令和5年度54.29-0.03
令和6年度53.93(最低)-0.36
令和7年度53.98+0.05

女子の傾向(平成20年度と令和7年度の比較)

  • 全体:54.85 → 53.98(-0.87点、下降)
  • ピークからの落差:平成30年度55.90が最高。令和6年度までほぼ一貫して低下
  • 直近:令和7年度の0.05点アップは、ほぼ横ばい状態

「コロナ前の水準に戻った」って、本当?

スポーツ庁の公式コメントは次のようなものです。

「体力合計点は、小中学校男女ともに前年度から向上しているが、中学校男子を除いてコロナ前の水準に至っていない。」

出典: スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果について(概要)」

つまり、小学5年生の男女は「コロナ前には戻っていない」状態です。平成30年度(2018年度)がコロナ前の最後の調査で、その時点でのピーク値に対して、令和7年度はまだ1点前後低いのです。

回復のスピードに注目

令和4年度を底に、男子は毎年少しずつ上向いています(+0.31、+0.49)。ただし女子の回復は停滞気味(令和5年-0.03、令和6年-0.36、令和7年+0.05)です。単純に「戻った」ではなく「戻りかけている」が正確な表現です。

落ちた種目と伸びた種目

「体力が低下している」という話は、すべての種目が同じペースで落ちているわけではないという点が大切です。平成20年度と令和7年度を比べると、種目によってはっきり方向が分かれます。

大きく落ちた種目(男子)

  • ソフトボール投げ-4.33m
  • 25.39m → 21.06m
  • 最も大きな低下。握力の低下も顕著

伸びた種目(男子)

  • 長座体前屈+1.20cm
  • 32.68cm → 33.88cm
  • 柔軟性は向上。上体起こしも+0.33回
種目(小5)平成20令和7変化
握力(男子)17.01 kg15.97 kg-1.04 kg
長座体前屈(男子)32.68 cm33.88 cm+1.20 cm
上体起こし(男子)19.12 回19.45 回+0.33 回
ソフトボール投げ(男子)25.39 m21.06 m-4.33 m
立ち幅とび(男子)153.96 cm150.96 cm-3.00 cm
握力(女子)16.45 kg15.61 kg-0.84 kg
長座体前屈(女子)36.64 cm38.17 cm+1.53 cm

スポーツ庁の種目別傾向分析(令和7年度概要より):

  • ・「握力」は、小中学校男女ともに低下傾向。
  • ・「長座体前屈」は、小中学校男女ともに向上傾向。
  • ・「持久走」は、男女ともに低下傾向。
  • ・「ボール投げ」は、小中学校男子で直近向上傾向、小中学校女子で横ばい。

何が落ちて、何が伸びたのか

ここが重要です。「体力が低下している」という一般的な言説は正確ではありません。より正確には:

パターン1: 落ちている種目

  • ・ボール投げ(筋力と投げる動作の組合せ)
  • ・握力(握る力そのもの)
  • ・立ち幅とび、50m走(爆発力とスピード)
  • ・持久走(持久力)

パターン2: 伸びている種目

  • ・長座体前屈(柔軟性)— 両性とも向上
  • ・上体起こし(腹筋の筋持久力)— 男子わずかに向上
  • ・反復横とび(敏捷性)— 小幅な変動

興味深いのは、柔軟性が向上している点です。ストレッチやヨガ、あるいはゲーム機を使った運動など、子どもの運動環境が変わっている可能性を示唆しています。一方、ボール投げや握力といった「昔ながらの遊びや運動」が低下しているのは、外遊び文化の変化と関連があるかもしれません。

「全体的な低下」という単純な説明では不十分

体力テストは10の種目の総合評価です。一部が低下し、一部が向上している場合、その合計点の解釈は複雑です。「体力がない」という結論より「どの種目が弱いのか」を分析することが、実際的な対策につながります。

わが子の体力を考えるときに

18年間のデータを見ると、時代とともに子どもの体力の質が変わっていることが分かります。かつてのように「全種目バランス型」から、「柔軟性は高いが爆発力は低い」という特性を持つ子どもが増えている可能性があります。

当サイトの診断では、お子さんの8種目の個別記録を全国平均と比較し、その子の強みと弱みを特定できます。「体力が低い」と一括りにするのではなく、「どの種目が弱いのか」を知ることが、適切なスポーツ選択につながります。

平成20年代の「ボール投げの天才」から令和時代の「柔軟性に優れた子」まで、体力の構成は時代ごとに異なる可能性があります。それが個性なのか、社会的な変化なのか、データだけからは判断できません。ただ、詳しく見れば、見えてくることはあります。

出典・参考資料

  • 文部科学省(スポーツ庁委託)「体力・運動能力調査報告書」— 新体力テスト8種目の全国平均値データ
  • スポーツ庁「令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」結果 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922_00014.html
  • 同 調査結果の概要(令和7年12月) https://www.mext.go.jp/sports/content/20251217-spt_sseisaku02-000046317_000101.pdf
  • 同 報告書 第3章 基礎集計(小学校) https://www.mext.go.jp/sports/content/20251216-spt_sseisaku02-000046317_000801.pdf
  • ※ 運動発達・スポーツ科学に関する内容は、スポーツ科学分野で広く知られた知見をもとに当サイトが解説したものです。
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